2011年12月29日

相続の単純承認をするためにはどのような手続が必要か?

Q.相続の単純承認をするためにはどのような手続が必要か?

A.特別な手続は必要ない。


相続の単純承認

相続人には,相続をするかしないかの選択権が認められています。相続をする場合には相続の承認をし,相続をしないという場合には相続放棄をすることになります。

相続の承認には,単純承認と限定承認があります。単純承認とは,何の留保も付けずに相続するという意思表示のことをいい,限定承認とは,相続財産で相続した負債を支払い,それでも残りがあったならばという留保付きで相続するという意思表示のことをいいます。


単純承認の手続

相続の単純承認にはどのような手続が必要なのかというと,実際には何らの手続も必要ではありません。

法定単純承認という制度があります。これは,一定の事由が発生した場合には単純承認したものとみなすという制度です。

法定単純承認となる事由には,相続財産の一部又は全部を処分したこと,相続放棄等をしないまま熟慮期間を経過したことなどがあります。これらの事由があれば,特に意思表示をしなくても,単純承認したものとして扱われることになります。

例えば,相続の開始を知った時から3か月(熟慮期間)以内に相続放棄や限定承認の手続をとらないと,法定単純承認となります。

したがって,何もしないまま熟慮期間が経過すれば,特に意思表示をしなくても単純承認をしたことになるので,別途単純承認の意思表示をしなくてもかまわないということです。

もちろん,あえて単純承認の意思表示をすることもできます。


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2011年09月22日

法定単純承認とは?

Q.法定単純承認とは?

A.単純承認の意思表示をしなかったとしても,相続財産の処分行為・熟慮期間の経過・背信行為をした場合には,当然に相続人が単純承認をしたものとみなすという制度のことをいう。


法定単純承認

【民法921条】
次に掲げる場合には,相続人は,単純承認をしたものとみなす。
  1. 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし,保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは,この限りでない。
  2. 相続人が第915条第1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
  3. 相続人が,限定承認又は相続の放棄をした後であっても,相続財産の全部若しくは一部を隠匿し,私にこれを消費し,又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし,その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は,この限りでない。

相続人が,被相続人の権利義務を限定なく承継することを相続の単純承認といいます。被相続人の権利義務を無限定に承継するわけですから,相続財産に借金があった場合にはその借金もすべて引き継いでしまうということです。

もちろん相続をしないという選択肢もあります。相続人は相続の放棄をすることもできます。また,負債を弁済してもなお相続財産が残っていれば,その分だけ相続するという限定承認という方法を採ることも可能です。

しかし,法的安定性の見地から,一定の場合には,当然に単純承認したものとして扱うという制度があります。それが,上記条文に規定されている法定単純承認という制度です。


相続財産の処分行為

法定単純承認の事由の1つは,相続財産の一部または全部を処分することです。

相続財産を一部であっても処分するということは,相続財産を自分のものとして扱う意思があるということの現れですから,法定単純承認となるのです。資産だけ手に入れて負債だけを放棄等によって逃れようという行為ができないようにするという意味もあります。

ただし,相続財産の価値を損なわないようにするための保存行為や民法602条の短期賃貸借は処分行為に当たらないため,これをしても法定単純承認は当たらないとされています。


熟慮期間の経過

相続人には相続をするかしないかについての選択権がありますが,いつまでも決めないでいると法的な安定性を害し,他の利害関係人に迷惑を及ぼす可能性もあるため,一定の期間内にどうするのかを決めなければならないとされています。この期間のことを熟慮期間といいます。

具体的には,熟慮期間内に限定承認か相続の放棄の手続をとらなければなりません。熟慮期間は,相続の開始を知ったときから3か月以内です。

この熟慮期間内に,相続の放棄も限定承認もしなかった場合には,法定単純承認となるとされています。


背信行為

法定単純承認は,相続人が背信行為をした場合にも生じます。具体的には,相続財産の隠匿,消費,相続財産目録への悪意の不記載です。

相続財産目録への不記載における悪意とは,「相続債権者を害する意思で」という意味です。積極的に害する意思が必要とされています。過失で書き忘れてしまったりした場合などは,法定単純承認自由には当たりません。

これらの行為は,相続債権者に対する背信行為です。限定承認や相続放棄は,いってみれば相続債権者よりも相続人の権利を保護しようという制度ですが,上記のような背信行為を行う者まで,相続債権者よりも優位に扱う必要はないことから,法定単純承認となるとされています。

この背信行為については,それが仮に限定承認や相続放棄をした後であっても,法定単純承認となるとされています。つまり,限定承認や相続放棄の効力がなくなってしまうということです。ただし,相続放棄の場合には,放棄の後に背信行為をした時点で,すでに放棄によって相続人となった人が相続を承認していれば,放棄の効果はなくならないものとされています。



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2011年08月22日

相続の単純承認とは?

Q.相続の単純承認とは?

A.相続人が,無限に被相続人の権利義務を承継することをいう。


単純承認

相続人は,相続をするかしないかを選択することができます。相続するという場合には相続の承認をし,相続をしないという場合には相続の放棄をすることになります。

相続の承認には,特に限定をせずに被相続人の権利義務を無限定に相続するという単純承認民法920条)と,相続財産の範囲で相続した債務を弁済し,それでも資産に残りがあればそれを相続するという限定承認(民法922条)とがあります。

単純承認は,被相続人の権利義務を無限定に引きうけるのですから,プラスの財産もすべて相続できますが,同時にマイナスの財産(負債)もすべて相続するということになります。

したがって,相続した財産が資産よりも負債が大きいという場合には,相続財産からだけでは負債を弁済しきれないので,相続人固有の財産で相続した負債を弁済しなければならなくなります

単純承認をする場合には,そのことをよく考えておかなければならないでしょう。


法定単純承認

相続の単純承認に特別な方式はありません。

ある一定の行為をした場合や限定承認や相続の放棄をしないまま一定の期間が経過した場合には,当然に単純承認したものとして扱われることになっています。これを法定単純承認といいます。

法定単純承認は,以下の場合に生じます(民法921条)

  1. 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし,保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは,この限りでない。
  2. 相続人が第915条第1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
  3. 相続人が,限定承認又は相続の放棄をした後であっても,相続財産の全部若しくは一部を隠匿し,私にこれを消費し,又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし,その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は,この限りでない。

上記3つの場合には法定単純承認となってしまいます。法定単純承認となってしまうということは,もはや相続の放棄をしたり限定承認をしたりすることができなくなるということです。

もし限定承認や相続放棄をする予定であるならば,上記の法定単純承認が生じないように注意しなければなりません。



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2011年08月16日

相続の承認とは?

Q.相続の承認とは?

A.相続人が相続をすることを選択することをいう。単純承認と限定承認の2つの方法がある。


相続の承認

以前にご説明したように,相続人には,相続するかしないかの選択権が与えられています。そして,相続するという場合には相続の承認をし,相続しないという場合には相続の放棄をすることになります。

相続人が相続を承認すると,その相続人について相続がされることになります。

もっとも,承認するのか放棄するのかをいつまでも決めないでいると法律関係が不安定になってしまいます。そのため,相続人の選択には熟慮期間が定められており,相続開始を知ったときから3か月以内に承認するのか放棄するのかを決めないといけないものとされています(民法915条1項)。


承認の種類

相続の承認には,2つの種類があります。

1つは「単純承認」です。これは,特に限定なく,被相続人の一切の権利義務を承継するというものです(民法920条)。

単純承認は特に方式はありませんが,一定の場合には当然に単純承認をしたものとみなす,という制度があります。これを法定単純承認といいます。

法定単純承認となるのは,相続財産(遺産)の全部または一部を処分した場合,承認も放棄もしないまま前記の熟慮期間が経過してしまった場合に法定単純承認となります(民法921条)。

もう1つは「限定承認」です。これは,相続した財産の範囲内で相続した負債を弁済し,その後に残りがあればその残りの財産を相続できるという制度です(民法922条)。

この限定承認をした場合でも,相続財産を隠匿したりした場合には限定承認の効果が認められず,法定単純承認となるとされています(民法921条3号)。



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2011年06月12日

ペットに遺産を相続させることはできるのか?

Q.ペットに遺産を相続させることはできるのか?

A.残念ながら,日本の法律では不可能である。ただし,負担付き遺贈の方法によって,受贈者に対しペットの面倒をみるように負担を課す方法か,まだ新しい制度ではあるが,遺言信託を利用して信託管理人による管理の下にペットのために遺産を利用するように信託するという方法は考えられる。ただし,最大の問題は,現実にペットの面倒を誠実にみてくれる人や団体を探しておくということかもしれない。

「トラブル」の遺産相続

先日,アメリカの大富豪の飼い犬である「トラブル」が亡くなったというニュースがありました。

しかし,いくら大富豪のペットであっても,飼い犬が亡くなったくらいで外国である日本でまでニュースが流されるわけがありません。

このトラブルはただの犬ではないのです。トラブルは,飼い主である大富豪のレオナ・ヘルムズリーさんから約200万ドルの遺産を相続した犬だったのです。

→ 「10億円相続の犬、昨年死んでいた

ペットの遺産相続

アメリカでは,州によって異なりますが,多くの州で,ペットに一定の財産を相続させるための制度が法律によって定められています。そのため,遺言によって(具体的には遺言信託の形をとるようですが)ペットに遺産を相続させることも認められているとのことです。

日本でも,こういう要望は多いのではないかと思われます。が,しかし,日本では,ペットといえども,法律上は,人以外のものということで「」扱いとされています(動物愛護法等の特別法を除く。)。

日本の民法では,相続や遺贈を受けることができるのは「」に限られていますから,ペットに遺産を相続させることはできません。仮に,そのような遺言を定めても法律上の効果を生じません。

日本で採り得る方法があるとすると,負担付き遺贈の方法を利用するということが考えられます。

負担付き遺贈とは,要するに,遺産をもらう代わりに何らかの負担を課せられるというものです。これを利用し,遺産をもらう代わりにペットの面倒をみなければならない,という遺言を残しておくということです。

しかし,遺産をもらった人が,ちゃんと面倒をみてくれるかどうかは分かりません。あらかじめ,信頼できる人なのかどうかを調査しておく必要がありますし,それを監視する人(おそらくは遺言執行者や他の相続人がそれをすることになるのでしょう。)を選任しておく必要もあるでしょう。

もう1つの方法としては,最近日本でも認められるようになった遺言信託を利用するという方法も考えられます。これは,遺産を信託管理人の管理の下,ペットのために遺産を利用してもらうという制度です。

これであれば,遺産を他の人に渡さずに済むので,より被相続人の希望に近い形で遺産が利用されるようになる可能性があります。ただし,まだ新しい制度であり,事例の蓄積が少ないので,これからの課題ということにはなると思われます。

いずれにしろ,法的な問題はともかく,やはり最大の問題は,ペットの面倒をみてくれる信頼できる人(または団体)がいるかどうか,なのかもしれません。


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2011年03月01日

相続人の選択権とは?

Q.相続人の選択権とは?

A.相続人の相続をするか否かの選択の自由を尊重するための制度として,相続するという意志を尊重するために相続の承認の制度が,相続をしないという意志を尊重するために相続放棄の制度がそれぞれ設けられている。


相続人の選択権

相続は,被相続人(亡くなった人)の死亡によって開始されます。つまり,相続人の意志にかかわらず,当然に開始されるわけです。これを,当然承継主義と呼ぶことがあります。

しかし,借金や負債を相続してしまう場合もありますし,あるいは,何らかの事情から資産があっても受け継ぐことを拒絶したいという場合もあるでしょう。

このような相続人の意思をまったく無視して相続の効力を発生させてしまうというのでは,あまりに相続人の権利や意思を害してしまうおそれがあります。

そこで,民法は,相続人の相続をするか否かの選択の自由を尊重するために,相続の承認及び相続放棄という制度を定めています。


相続の承認と放棄

相続の承認とは,文字どおり,相続をするという意志を表示することをいいます。相続を承認した場合には,確定的に相続の効果が相続人に生じることになります。これを覆すことは容易ではありません。

相続の承認には,単純承認と限定承認とがあります。単純承認とは,相続の効果が生じることを全面的に認めるという意志表示です。他方,限定承認とは,相続財産の範囲内に限り相続の効果が生じることを限定的に認めるという意志表示のことをいいます。

他方,相続をしないという意志表示のことを相続放棄といいます。相続放棄をすると,はじめから相続しなかったことになります。



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2011年02月03日

借金・負債も相続してしまう?

Q.借金・負債も相続してしまう?

A.資産だけでなく,借金・負債も相続されることになる。


借金・負債の相続

遺産の相続は,以前も説明したとおり,相続人が被相続人(亡くなった人)の権利義務のすべてを包括的に承継するということです。

権利だけではありません。義務も受け継ぎます。プラスの遺産(資産)だけではなく,マイナスの遺産(負債)も一緒に受け継ぐことになるのです。

マイナスの遺産として,代表的なものは借金です。被相続人が借金を負っていた場合,相続をすると,被相続人はその借金を被相続人に代わって返済していかなければならなくなります。


被相続人に借金・負債がある場合

まずは,どのくらいの借金・負債があるのか,逆にどのくらいの資産や財産があるのかを確かめる必要があります。

その上で,資産が借金や負債を上回っているのであれば,相続をしても,相続した資産で負債を支払うことが可能ですから,相続をしても問題ないでしょう。

しかし,負債の方が資産よりも多いという場合には,相続をすると,負担ばかりを背負ってしまう危険性があります。

そのため,民法では,相続放棄という方法と限定承認という方法とが用意されています。

相続放棄は,資産もすべて相続しないかわりに,借金・負債もすべて相続しなくて済むという制度です。つまり,相続そのものをしないという制度です。

限定承認とは,相続財産(遺産)の範囲内でのみ,借金・負債を相続するという制度です。したがって,借金・負債の方が資産よりも大きい場合には,相続はなされないということになります。

借金・負債の方が大きいことが明らかな場合には,相続放棄を選択するのが通常ですが,負債の方が大きいことが明らかでない場合などには,まれに限定承認を選択する場合もあります。



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2011年01月10日

相続されない被相続人の一身に専属する権利義務とは?

Q.相続されない被相続人の一身に専属する権利義務とは?

A.権利義務の性質上,被相続人のみに帰属すべきものをいう。


相続されない権利義務

前回説明したように,相続が開始されると,被相続人(亡くなった人)の権利義務がすべて相続人に包括的に承継されることになります。

もっとも,例外的に,相続が開始されても,相続人に承継されない権利義務があります。それが,被相続人の一身に専属していた権利義務です。


一身に専属した権利義務

では,被相続人の一身に専属した権利義務とは何かというと,その権利義務の性質上,被相続人のみに帰属すべきものを意味します。

例えば,使用貸借の借主の地位,委任契約の当事者の地位,組合員の地位などが挙げられます。

また,身分法上の権利義務は,財産権的な色彩の強いものを除いては,一身専属的な権利義務となります。慰謝料を請求する権利なども,原則として相続の対象になると考えられています。



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2010年12月11日

相続すると何が生じるのか?

Q.相続すると何が生じるのか?

A.被相続人の一身に専属したものを除く被相続人の財産に属した一切の権利義務が,相続人に包括的に承継される。


相続の効果

一口に相続といっても,実際にはどのような効果が生じるのでしょうか?

この点,民法第896条は,「相続人は,相続開始の時から,被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし,被相続人の一身に専属したものは,この限りでない。」と規定しています。

すなわち,相続の開始によって,被相続人(亡くなった人)が有していた一身専属的なものを除くすべての権利義務を,相続人が承継することになります。

承継とは,文字どおり受け継ぐということですが,これには,特定承継と包括承継(一般承継とも呼ばれます。)があります。

特定承継とは,特定の権利・義務だけを受け継ぐということであり,包括承継とは,すべての権利・義務を承継するという意味です。

相続の場合は,この包括承継に当たります。したがって,原則として,被相続人が有していたすべての権利・義務を相続人が受け継ぐということになります。

ただし,注意すべきことは,「権利」だけでなく「義務」も承継するということです。つまり,被相続人が持っていた財産だけでなく,借金などの負債も受け継ぐことになるということになります。


一身専属的な権利義務

もっとも,上記民法896条ただし書きのとおり,被相続人に一身専属的な権利義務は,相続人に承継されないものとされています。

一身専属的な権利義務とは,その権利や義務の性質・内容からして,他の人に与えたり課したりすべきものではなく,その人にだけ与えられてしかるべき権利やその人にだけ課せられてしかるべき義務のことをいいます。

したがって,被相続人との個人的な信頼関係をもとにして成立した権利や義務などは,あくまで被相続人と相手方との間の個人的な関係をもとにしているため,被相続人に一身専属する権利義務として,相続人には承継されないものということになります。

ただし,相手方の期待を裏切らないようまたは不当に利益を与えないように,この一身専属的な権利・義務となる範囲は,ごく例外的な限定されています。例えば,金銭的な権利・義務については,原則として相続されるものと考えることになるでしょう。



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